筑波技術短期大学の中で整備・活用されてきた情報補償環境について、開発や運営に関わっている教官等からそのねらいや特徴を整理した上で、視覚障害学生・聴覚障害学生の利用調査を行い有効性を検討した。
(1)情報補償環境のねらいと特徴(教官ヒアリング)
情報補償環境が具体的に「誰に対して」、「どのような方法で」、「どんな情報を」補償しているかを調査し、その情報補償プロセスがうまく機能するために情報補償環境が備えている特徴(また備えるべき特徴)を整理した。視覚障害者及び聴覚障害者に対する情報補償が備えている主な特徴として以下のような項目が上がった。これらの特徴が情報補償する上で必要不可欠な要件であり、今後、情報補償環境を整備・改善していく上で考慮が必要であるといえる。
<視覚障害者のための情報補償環境が備える特徴 → 評価項目>
・情報発信へのアクセス:利用度・利便性
・情報を授受できる:情報摂取性
・情報が機能する:空間把握性・安全性
<聴覚障害者のための情報補償環境が備える特徴 → 評価項目>
・情報を取り出すことができる:利用度・利用のしやすさ・分かりやすさ
・情報を受容できる:視覚化等の代替情報・明瞭度
・情報が理解できる:理解の促進
本調査における情報補償環境の整理・評価に当たっては、それらの項目ごとに評価し、情報補償環境の特徴さらには問題点・改善点を構造的に提示できるように試みた。視覚障害者と聴覚障害者の両障害者の行動特性が異なることから、各情報補償環境の特徴は微妙な相違が生じている。本調査では、あえてこれら両障害に共通した評価項目として統一することなく、その特徴を的確に表す用語をそのまま用いている。また、細項目をみると利用度・利便性・利用のしやすさ・分かりやすさ等は両障害に共通しうる特徴であり、空間把握性・安全性等は視覚障害固有の特徴で、視覚化等の代替情報等は聴覚障害固有の特徴である。今後の課題として、視覚障害・聴覚障害の両者に配慮した環境整備のための指針・評価項目を整理していくために、これらの細項目の共通性・相違などを詳細に検討する必要がある。
(2)情報補償環境の利用調査(学生アンケート)
学生が実際の活動の中で、本当に利用しそれが有効に機能しているかが、情報補償環境の有効性評価に直接関連している。調査では、「知っている−知らない」、「役立っている−役立っていない」、「改善の必要あり(具体的に何?)−改善の必要なし」の3項目についてアンケート調査した。調査結果の中には、多くのものが役立っていると回答されているが、知らないで全く役立っていないものや知っていても全く使われていないものもあった。これらの情報補償環境は今後何らかの改善が必要とされているものでであり、その改善点なども含めて整理した。
<注>
聴覚障害者・視覚障害者の正確な進学率を示す統計データは無いが、障害者白書及び調査報告書13)14)から視覚障害者・聴覚障害者の大学進学率は5〜10%程度であると推定されている。一般学生の大学進学率(約60%)に比べるとまだ低く、さらに年々増加傾向にあることを考え合わせれば、今後高等教育機関での情報障害者への対応の必要性がさらに高まってくると予測される。
<参考文献>
1)筑波技術短期大学5周年記念誌、1992
2)筑波技術短期大学10周年記念誌、1997
3)吉田あこ:視覚障害者の教育施設、「特集・障害者に優しい教育施設」、教育と施設、9606号、48-50
4)吉田あこ:聴覚障害者の教育施設、「特集・障害者に優しい教育施設」、教育と施設、9606号、48-51
5)筑波技術短期大学案内 視覚障害関係、平成10年度版
6)筑波技術短期大学案内 聴覚障害関係、平成10年度版
7)筑波技術短期大学概要1999版
8)求人のための筑波技術短期大学案内 聴覚障害関係学科、平成3年度版
9)筑波技術短期大学(視覚)基本設計説明書、昭和62年12月
10)筑波技術短期大学(聴覚)基本設計説明書、昭和62年12月
11)視覚障害者・聴覚障害者に配慮した教育環境、日本建築学会建築人間工学研究会筑波技術短期大学見学会資料、1996, 11
12)伊藤三千代・森一彦・加藤宏:筑波技術短期大学の学習行動における障害と情報環境に関する調査−情報障害からみたユニバーサルデザインの研究その1、筑波技術短期大学テクノレポート、No.4、1997
13)小畑修一他:身体に障害を持つ社会人に対する高等教育のあり方に関する調査研究(文部省委託研究)、1998
14)障害者白書、総理府編、1997