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4-3.事例から見た、
本学視覚障害関係学科情報補償環境の特色

4-3-1 施設・設備の評価から見た特色

(1) 建築設計の基本コンセプトは視覚障害者にとって把握しやすい単純な空間
筑波技術短期大学(視覚)基本設計説明書(昭和62年)から「建設設計の基本コンセプト」を探ると当初から以下のようなことが配慮されていたことが分かる。
 ・直感的に捕らえられる単純構造
 ・動線的にも視覚的にも明快な構造
 ・片廊下を原則とし、自然採光を十分に取りいれた明るい動線
 ・学生の動線はできるだけ短くする
 ・動線の交錯部は直角とし、廊下を回廊型とする
 ・木・コンクリート・ガラス等の材質の変化による感知を促す
「単純なロの字型校舎」に見るように、これらコンセプトに盛り込まれた構想はほぼ実現しているといえる。しかし、廊下の幅員の狭さに起因する廊下や入り口での視覚障害者同士のすれ違いの際に衝突の危険性があるなど安全上の問題が残されている。

(2) 校庭等外周環境
外周環境は今回の調査では特に対象とはしなかった。設計のコンセプトには
 ・水の流れ、木立のふれあい、花の香りを感じ、時を感じることのできる場所
 ・ふれあいの広場などのシンボリック空間
などが考えられていた。しかし、開学後に緑地を縮小して点字ブロックや誘導歩道が設けられた部分もあり、景観保全と障害者のために必要な情報提示のすりあわせという課題は今後も重要である。また、校舎棟と寄宿舎をつなぐ通路の柱を示すために設けられた玉砂利など、その有効性が疑問視されているものもある。
建物外ではあるが情報補償の観点から、正門から玄関へのアプローチまでの空間の分かりにくさは早急に何らかの対策を講じる必要があるとの指摘があった。

(3) 教室の環境、授業・教育のための情報補償
一言でいうと授業周りの情報補償は「各教室にパソコンを」である。 視覚障害といっても全盲と弱視では情報補償の方法は全く異なる。各教室に音声合成装置や点字ディスプレイ付きのパソコン、さらに拡大読書器などが備えられている。学生はこれら機器を自分の障害にあった形で使用している。このため机はOA用となっている。椅子は開学当初、必ずしもパソコンを長時間使用するのに相応しいものではなかったが、これについては開学し実際に学生が入学してきた時点で不都合が判明し、OA用に交換された。教室によってはパソコンが教室を手狭にしているという指摘もある。
今後は学内の情報ネットワーク化をさらに推進し、図書資源や点字情報、触図情報の有効利用が期待される。特に本学の電子ファイルや電子メールを媒体とした教官と学生のコミュニケーションという様式は、障害者教育に経験の浅い教官や他大学における障害者受け入れにも有効と考えられる。

(4) サイン
点字ブロック、研究点字表示、研究室と教室の位置を示す廊下手すりの切れこみ、階段の階数表示ボッチ、エレベータの音声案内などはよく利用されているようである。ただし、サインがはがれていたり、欠けている箇所もあり、サインのメインテナンスが重要である。また、サインの意味や存在を知らない学生も多く、入学時の十分なガイダンスが必要である。

(5) 総括
利用度・利便性・空間把握性・情報摂取性・安全性・デザイン性という6次元での評価観点では設備によっては、かならずしも関係ない評価軸もあり、また「空間把握性」・「情報摂取性」・「安全性」軸などでは相互に重複する部分が多く、評価者にとっては次元そのものの意味が明確でなかったようである。しかし、視覚部の情報補 償環境が一定の評価を得ていることは確認できた。

4-3-2 学生の評価から見た特色

(1) 配慮についての知識の有無
 ・障害補償パソコンなどはよく認知されているが建物全体構造などの工夫は配慮として認識されにくい
 ・追突防止や安全のためのサインが意外に知られていない
 ・入学時オリエンテーションの重要性
 ・特に全盲の学生は補償設備の存在すら知らないことが多い
 ・操作法等指導の重要性
情報障害補償のための種々の設備や工夫がこらされていても、その存在が知られていないがために有効利用されていないものがある。現状では学生への周知が不充分であることが浮かびあったといえる。

(2) 施設のメンテナンス・改善
 ・情報補償パソコンや電子図書閲覧室はよく利用されている
 ・補償機器の刷新・メンテナンスの要望
情報補償として電子図書閲覧室や教室のパソコンの利用度は非常に高い。しかし、新しい機種への刷新とメンテナンスへの要望も強い。点字使用者と弱視者ではパソコンに要求する機能も異なり、適応する機種も異なる。学生からもっとWindows対応の機種の台数をという声も。

(3) 安全設備・学内移動上の問題
 ・動線を示すサインや引き戸の整備は今後も拡張が必要
 ・安全のためのサインこそ、自然に理解できることが重要
手すりの切れこみや階段のボッチなど、一度ガイダンスを受ければ使用できるサインも多いが、これらが必ずしも周知されていないと指摘された。柱の追突防止帯やプールの泡発生装置などかえって危険と指摘されたものもある。体育館のスピーカなどは適切な操作指導があればもっと活用されると考えられる。

(4) 短大の存在理由と学外からの利用者への配慮
・日頃学内で生活している者には分かりきったことでも、始めて来学した学外者にも情報が伝わるように配慮されているべきである。
・障害者施設としては学内の評価に甘んじていてはいけない
本学が視覚障害者が生活している施設として、単に学内の教職員・学生だけでなく、学外から訪れる障害者にも分かりやすい情報補償を提供すべきなのではないかとの指摘があった。玄関を示す誘導チャイムやトイレサインなどに改善の余地がある。

4-3-3 視覚部情報補償環境の総括的評価(教官・学生を総合して)

・装置や工夫が十分に知られていない
入学時の施設・サインなどについて指導を強化する必要がある。
・機材のメインテナンスのための財政的・人的体制基盤の確立
情報補償機器は日進月歩である。また常時正常に動いていてこそ意味がある。機種の刷新やメンテナンスのための財源・人的資源の確保が課題である。また、補償機器は必ずしも新しいものが障害者にやさしいとは限らない。すべての学生の要望に対応できる体制で施設は整備させるべきである。
・本学の対外的存在理由を考えた設備も必要
本学の存在理由を考えた場合、学外からはじめて訪れる障害者への対応とそのための設備を整備する必要がある。


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Last modified : 2002.11.25
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