(1) 外部空間は見通しを優先に安全と視覚的なコミュニケーションを図
・建物設計の基本コンセプトは「見通しのよい空間」
建物や壁が視覚情報を遮断することをできるだけ少なくすることが基本コンセプトとなっている。このため外観は、吹き抜け、外廊下、ガラス面の多用等の特徴を呈している。
・個別空間にも見通しの確保
個別空間やエレベーターなどの空間にも小窓を設けることで外部とのコミュニケーションを補償することができる。
(2) 音のサインは視覚的なサインに変換を
授業の予鈴や非常ベル、ドアチャイム、ホイッスル等の音サインは光等の視覚的サインに変換する必要がある。また、情報への注意を喚起するためのフラッシュ等の補助情報の付加も重要である。
(3) 講義室・実験室には相互の顔が見える配慮を
・囲み型、囲み型―外向き型の交互使用、自由な机配置
多くの講義室が「教師対学生」「学生対学生」の視覚的なコミュニケーションを確保するため、囲み型の机配置を採用している。パソコン等の機器は視界を遮るため空間の周辺部に置き、機器使用時は学生は外向きに、講義を受ける場合は再び中央向きの囲み型へと、場の状況に応じた授業体型がとれる配慮が施されている。また、授業形態に応じて机配置を自由に変更できるよう、可動式の机、椅子の使用も有効である。
・機器の設置位置に配慮
視聴覚機器が視野を遮ることがないよう低い位置に置く、機器を操作する学生の背後から話しかけることがないよう機器の反対側に回れれような空間の確保が有効である。
・照明への配慮は今後の課題
視聴覚機器の種類によっては室内を暗くする必要が生じ、この時、発信者の顔や姿が見えにくくなる。スポット照明の追加や天井埋め込み照明の点滅グループの変更が必要である。
(4) 講義室での視覚情報提示は文字、映像、手話等を同時併用
・多様なコミュニケーションモードを使用。効果的な組み合わせの検討が今後の課題。
講義室には多様な視覚情報が提示できるよう黒板・ホワイトボードの他、OHP、プロジェクター等の視聴覚機器が準備され選択的、並列的に使用され、情報の視覚化、明瞭度を向上させている。
・効果的な組み合わせの検討が今後の課題。
「理解度の向上」については、情報を提供する側の技術に依存するため、今後は情報の構造化や多様なコミュニケーションモードの効果的な使用方法の検討が必要である。
(1) 配慮についての知識の有無
・感じにくい配慮
校舎やアトリウムの設計上の配慮、エレベーターの窓、自由な机配置、回り込みの空間確保等については、配慮として意識されにくく、これらの配慮を今回の調査を通して初めて知った学生が多い。入学時などにオリエンテーションとして知識を得る機会があれば、環境に対する見方や評価を日常的に意識できたかもしれない。
・感じやすい配慮
囲み型の机配置は、コミュニケーションしやすい配置であることを聾学校等での経験から「必要な配慮」としてとらえている学生が多いと思われる。
音声情報を文字情報に替えたり、音情報を光や振動の情報に変換している設備については配慮として実感している学生が多い。
(2) 見通しの確保に伴い発生する問題点
見通しの良い建築構造を実現するために、構造が複雑になったりガラス等の素材を使用するために安全性への不安、プライバシー保護への不安が生じている。
・空間の把握性
見通しを確保するための外廊を設けることで、複雑な空間構成になり位置関係が分かりにくかったり、行き来しにくくなっているのではないか。
・安全性
ガラス張りが多く、災害時の安全性に不安を感じる。
・プライバシーの確保
ドアに設けられたガラス窓はプライバシーが損なわれる不安がある。研究室においては部屋の使用者が貼り紙などでガラス窓を塞ぐ傾向にあり、結局役立っていない場合がある。
(3) 配慮された代替情報の有効性をさらに高める必要
・光、振動等の強さの改善
サインランプやお知らせランプの光や振動は、提示されているにも関わらず刺激として弱く、気づきにくいために効果が発揮されていない場合がある。また、CATVの情報に気づきやすさを高めるための色彩の工夫を望む意見が見られる。
聴覚的な情報は受信者の向いている方向に関係なく気づくことが出来るが、視覚的な情報は視野にその刺激(合図・記号)が無い場合は気づけないという特性に注意し、配慮する必要がある。
・光、振動等の情報の分化の必要
サインランプの色を授業の開始と終了で分ける、お知らせランプの音源を知らせるピクトグラムの内、非常を知らせるピクトグラムを別色(オレンジ、赤など)にするなど、情報の内容に合わせた分化した提示を望む意見が見られる。
光の点滅や振動のON・OFFを使って、その長短や強さの組合せによって複雑な情報内容を分化させることは難しい。安全―危険、始まり―終了、進行―停止など単純で基本的な情報内容のレベルでも良いので何らかの記号性の統一(共通性・基準)を図ることは出来ないものであろうか。
・提示情報の大きさ
リアルタイム字幕や話者の口元の投影などをさらに大きな画面での表示を望む意見が見られた。
提示される視覚情報の大きさや距離、角度等に関する基礎的な研究が必要である。
・明るさの確保と配慮
夜間のキャンパス内の照明を明るくして欲しい、OHPの設置位置や光源の反射で提示された情報が見にくい場合がある等の意見から見られるように、視覚情報を受容する際の周辺環境の整備、特に明るさや眩しさに関する配慮が必要である。明るい窓や太陽を背にして話しかけられると話し手の顔や姿が逆光によって暗くなり見づらくなるなる等と同様の状況である。
・文字の読み取り速度と提示時間の関係への配慮
読みとりやすいCATVの文字提示時間の確保を望む意見に見られるように、平均的な読み取り速度と文字数の関係の他に、理解度の向上を含めた、文章内容の難易度との関係や内容の重要性の違いによる文字の大きさやレイアウトの工夫、情報を提示する順序性(結論から詳細へなど)の配慮を必要とする。
・情報量の拡大
字幕入りビデオ教材のジャンルを増やすことや邦画やバラエティなど字幕が供給されないソフトにも字幕を入れて欲しいなど、本学の情報補償設備を活用してより多くの字幕入りビデオソフトの供給を望む意見が見られた。