この度、筑波技術短期大学教育改善推進事業の一環として実施した情報補償環境実態調査結果を「高等教育における情報(聴覚・視覚)障害者のための情報補償環境-筑波技術短期大学での試み・10年間の実践とその評価」として広く社会に公開する目的で刊行できることを、大変喜ばしく思っております。
筑波技術短期大学は、わが国で唯一の聴覚・視覚に障害を持つ学生を対象とする国立の3年制短期大学の高等教育機関として、1987年10月1日に設置されて以来、11年あまりが経過致しました。その間に、432名の学生(聴覚障害学生267名、視覚障害学生165名)が卒業し、今現在も大学で296名の学生が学んでおります。また、それを支えるスタッフとして199名の教職員が教育活動に参画致しております。その教育活動の器である教育環境も、聴覚・視覚に障害を持つ学生にとって円滑で充実した学習ができるように、実践の場で様々な工夫・配慮がなされてきました。
特に、聴覚や視覚に障害を持つ学生にとって、授業などでの聴覚情報・視覚情報をどのように補償していくかは極めて重要であり、筑波技術短期大学における情報補償環境の整備および改善は、大学設立当初から今日に至るまで最重点課題のひとつであります。約10年間に渡って学生・教職員が共に関わりながら情報補償環境の整備・改善に取り組んでまいりました。本報告書は、現在の筑波技術短期大学の情報補償環境の実態を調査し、それを評価することによって、今後の課題を見いだす目的で作成されたものであります。さらにこの情報補償環境の整備活動を社会的に展開する意味で、この調査結果を大学内にとどめることなく社会に広く公開し、ご批評をいただくことと致しました。
今日、国連・障害者の十年(1983〜92年)や障害者基本法(1993年)による福祉施策が展開され障害者の自立と社会参加が大きく前進しており、さらにハートビル法(1998年)による高齢者・障害者を含めた誰もが不自由なく利用できる施設づくりが進められ、障害者が社会で活躍できる場は広がりつつあります。しかし一方で聴覚・視覚障害者の高等教育への進学率は5〜10%と全体進学率約60%に比してまだまだ低く、全国の各大学・短大・高等専門学校などの高等教育機関に分け隔てなく参加できる環境整備が望まれております。また生涯教育・リカレント教育に於いても、障害を持つ社会人が気軽に楽しんで参加できる学習環境の整備が求められています。
筑波技術短期大学での実践的試みを広く社会に公開することが一助となり、聴覚・視覚障害者のための情報補償環境に関する情報や知識が広く社会に伝播し、人々の理解が深まり、障害者の高等教育さらには社会参加・自立を支援するための環境づくりが益々進展することを期待しております。
平成11年3月